庭の樹々に対する想い
人が手を加えた「庭」は全くの自然ではありませ ん。
「庭」は人の手が加わっているので、人工物と考えることもできます。
でも、お庭に樹やお花を植えるのはどうしてでしょうか。
「模したもの」であっても自然らしさを感じられると、癒しが得られるからではないかと思います。
庭木、鉢植であれ、また室内に飾られる観葉植物であれ、身近に緑を感じたい、と考えることはストレスに満ちた生活を送らざるを得ない私たちの 防御 本能なのかもしれません。
そんな緑は私たちを癒すためだけに存在するわけではありません。
彼らは彼らで成長し、生存競争に勝ち、生き永らえて、子孫を残すという目的をもって生きています。
動物や植物が必ず持ち合わせている命の意味であり、たかだか数百万年しか生きていない人類が作り上げた道徳や法律などの秩序などというものは 全く 通用しないのです。
時に彼らは想像以上の成長力を発揮し、私たちが望む以上に茂ったり、大きく育ったりします。
自由に成長させてあげられる環境があればよいのですが・・・
そうではないことが庭ではほとんどでしょう。
だからこそ、お庭には手入れが必要なのです。
お庭全体を見て、植えられている植物の特性を鑑みて、それを愛でる人の思いを理解して・・・
専門的な知識を持ち、それを実践する技術と経験、そして庭に癒される人の気持ちを思うこと。
これはお庭で仕事をさせていただく私たち庭師が持ち合わせてなければならない最も大切な「資格」と思います。
緑の仕事を通じて、みなさまに癒しを提供したい、という思いを込めて Green works ひなたとみどり をたちあげました。
お庭で癒しを得てほしいから、「模したもの」であっても自然らしさを感じてほしい、と思っています。
特に樹木に関しては、大きく目立つだけに、自然に感じられる手入れの仕方が望ましい、と私は考えます。
では、「自然に感じられる手入れの仕方」とはどのようなものなのでしょうか。
「自然風」みたいな言葉でまるめてしまうと何となくわかったような感じになってしまいますが・・・
世の中の植木屋さんも「自然風」の剪定を勧めているように思います。
「自然風」ってなに?どういうふうにすることなの?と聞かれて的確に答えられる人はそう多くないかもしれません。
ちゃんと突き詰めて考えることをせず、こんな風にしたら「自然風」かな、と思っているだけだからと思いますが、それでは説明もできなければお 勧め することもままならないのではないかと思います。
私の思う「自然に感じられる手入れの仕方」とは、
・所謂忌枝(いみえだ)といわれる不自然な生え方をした枝が少ないこと
・先端に行くに従って徐々に枝先が細くなっていくこと
・バランスの良い枝順(不自然ではない枝のつき方)が保たれていること
・先端に行くに従って細やかな枝数が増えていること
・枝それぞれ、ある程度弧状の輪郭線がざっくり(きっちりしすぎない程度に)保たれていること
・樹種の特性を理解し、それぞれの「その樹らしさ」を殺さないよう仕立てること
これらを剪定により極力実現していくことです。
お客様のお庭を拝見すると、造園家の想定や想い、そして個々の植栽の役割が見えてきます。
お庭の設計の際の想定が標高3000mの山頂に近い深山なのか、避暑地に代表される高山なのか、武蔵野の大地に根差す雑木林なのかによって も、仕 上げる樹形は大きく変わるのです。
具体的に言うと、幹のゆすり、枝の角度、枝先の詰まり方などですが、深山に近いほど、環境は厳しくなってくるので、これらの構成はより空間密 度が 凝縮されていきます。
それぞれが自然であり、想定の違いによって見え方が違うだけなのですが、それぞれの樹のあり様は、本物の自然環境に出向き、よく観察し、「樹 の気 持ち」を理解したうえで、どのように手入れしたらそのように見えるのかを追求していかないと、「模していく」のは難しいと思います。
このような手入れを基本として、花付き、実付きをよくしたいというご要望をかなえたり、適期でない時期の剪定、木の状態により剪定の強弱を判 断し ていかなければならないのです。
ある程度の知識や経験があるから大丈夫、ではなく、どんどんブラッシュアップして磨きをかけていくという姿勢がないとなかなか難しいです。
樹には永く癒してほしいと考えるのは自然なことです。
自然に感じられる樹形を保つためにはそれに応じた手入れの仕方が必要なことはお話ししましたが、「切り方」にもこだわりがないと樹を痛めてし まい ます。
枝を切られた樹は、菌の侵入による腐朽を防ぐため、切り口(傷口)をいち早く塞ごうとします。
切られた傷口を塞ごうとしても、ベストな状態の切り口になっていないと傷口の補修が菌の侵入に追いつかないのです。
植木屋さんは作業にスピードが求められますが、急ぐからと言って最適な切り方ができないのであれば、切らないほうが良いのではないかとさえ思 いま す。
なぜかはわからないのですが、樹が不要と判断して自ら枯らせた枝は簡単に折り取れます。
これに対して、人が不適切に切った枝は、なぜか簡単には折り取れません。いつまでも残ってしまい、菌の侵入口として存在 してしまうのです。
だからこそ一枝一枝きちんと最適な位置で切ってあげる必要があります。
植木屋さんが使っている道具はたいてい、剪定のこ、剪定ばさみの二つかと思います。
でも、この道具だけでは最適な位置で切れないことが多々あるのです。
私はさらに道具を2つ常備しています。剪定ばさみ以外に芽切狭、剪定のこ以外に引廻のこを、という具合です。
芽切鋏、引廻のこともに、狭い場所にも入り、最適な位置で切ることができます。
普通の植木屋さんでここまでの道具を腰に下げている人はあまりいないと思います。作業はもちろん、道具の持ちかえにも時間がかかりすぎるから で す。
私は別の人が切り残した「菌の侵入口」も気づいたら切り取ります。菌が侵入した後だから今更おそいよ、という人もいますが、それでも、少しで も傷 口を塞ぐのに時間がかからないほうがそれ以上の侵入を防げると思っているからです。
長々と思い を綴ってしまいましたが、
・お客様のお考え、お庭に対する想いを尊重し作業します。
・全体的なお庭のイメージに合った、自然が感じられるきれいな剪定をいたします。
・樹にやさしい丁寧な処理をいたします。
Greenworksひなたとみどりでは、どんな時でも、どんなお庭でも、そんな仕事を実現させたい、と思いを巡らせています。
まだまだブラッシュアップしていかなければならないところは多々あると思いますが、ぜひ皆様のお役に立ちたいと考えております。
お付き合いくださいましてありがとうございます。
どうぞよろしくお願い致します。
Green works ひなたとみどり
代表 萬 知浩